2012/04/20

「ツノムシテン/触展」を見てきました。


女装の私が、東日本橋駅からすぐのgallery*yorucaで4月19日まで開催されていた「ツノムシテン/触展」を見てきました。


デザインと生活文化をめぐるデザインフォーラム "foro 08" (フォロ・ゼロット) のメンバー 西森陸雄、今村創平、橋本夕起夫、松下計、皆川明が2009年2月よりスタートさせた「五感とデザインの関係性」をテーマにした展覧会プロジェクト。その第4弾が本展示。「触覚」をテーマにしたデザインに挑戦する作品群は、見た目に異様。触れたい触れたくないの境目をウロウロと行き来しながら鑑賞できる展示でした。

その中でも特に、ミナ・ペルホネンの皆川明さんの作品が印象的でした。

昆虫の触角を模したヘルメットが置かれていました。全部で3種類。ただただ長い触角が2本伸びているヘルメット。蛍光イエローのビニル製のチューブが何本も伸びているヘルメット。先端に鈴のついた触角が2本あるヘルメット。ヘルメットは自由に手に取る事ができ、もちろん、頭にかぶることができます。gallery yorucaは吹き抜けの階段を挟んが1階と2階があり、その2つは開放的なのですが、広さはそこまで十分ではありません。(だからこそできる展示が素敵なのですが。)

さて、そこまで広くない展示スペースで長い触角のヘルメットをかぶるとどうなるか。ちょっと頭を動かしただけで触角が天井にぶつかります。「がりっ」と音がし、コンクリートと針金が接する硬い感覚がヘルメットを伝わり頭に届きます。条件反射で首をすくめ、そして周りを伺った自分に驚きました。命を狙われているわけでもないのに。びくびくしてバカバカしい…。しかし確かに触角を伝わる違和感で警戒心が高まりました。「んなばかな。大げさに言い過ぎじゃないですか。」多少、誇張しているのは否定しません。ただ、可動範囲が急に狭まる感覚を想像してください。恐ろしいです。

頭をそろそろと動かし、触角を含めた自分の身体を確認します。なんと不自由で窮屈なんでしょうか。何もできません。動けません。そろそろと静かに音を立てないように、動物に例えるならば「ナマケモノ」程の速度でしか動けないのです。展示スペース内でしか体験することのできなかった触角の触覚。建物の外にでて体験すればこの閉塞感から開放されるのかしら。妄想を巡らせてみたのですが、電柱や看板や電線や車や自転車や潜り抜ける扉の高さ、乗り物の天井の低さや一般的な建物の天井…生きづらさしか想像できません。

「私たち人間はもっと敏感であるべきだ」とか「生活環境に情報量が多すぎるのが問題だ」とか声高に言うつもりは無いです。触(ツノムシ)展を通じて、思った以上に人間はコンパクトで、その割に繊細。にも関わらず刺激的な環境で生活しているのだなあと再認識できました。湯葉の厚みほどギリギリの状態で、私たちは歩いているんですね。


…うーん。もう1つ。この展示を通じて感じたこと。鈍感な自分に気づけたかもしれません。そこに何があるのか、自分にとって危険なのかそうでないのか、自ら情報を刺激を取得し現状を把握しようとする触感が鈍感になっている。逆に、与えられる刺激に対しては敏感なままでいる。「私たち人間はもっと敏感であるべきだ」とまで言いませんが、刺激に対して受け身でいることをもう少し意識したい。なるべくなら積極的に感じる姿勢を保ちたい、と思わせられます。

この展示は五感をテーマにしています。今回は第4弾でした。という事はまだ1回展示がある予定です。次回が楽しみなグループ展でした。


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【ツノムシテン 触展】
会期:2012/4/6~4/19【終了】
会場:ギャラリーヨルカ (MATERIO base. 内)
詳細:www.materiobase.jp

2012/04/16

Nerhol新作展「Misunderstanding Focus」を見てきました。


女装の私が、恵比寿にあるlimArtで開催中のアートユニットNerholによる新作展「Misunderstanding Focus」を見てきました。

重ねた2Dを彫り3Dに再構築する事で対象物の新しい印象や解釈を鑑賞者に与えるNerholの新作は、ポートレートをモチーフにしていました。limArt内の展示は大きく2つの構成にわかれています。入り口すぐは大きくプリントされた作品が8点ほど。その奥の部屋には胸の辺りの高さのテーブルに20〜30程の作品が展示されていました。



奇妙に歪められた人の顔をよく見ると地図の等高線のような筋が何本も引かれています。顔はこの線に沿って歪んでいます。線には影が見えます。重ねた紙を彫って作られた作品のようです。しかし顔写真を重ねて彫っているだけならば、このような歪みは起こりえません。顔の輪郭は心電図のように凹凸し、鼻や目がほぼ無くなっている人もいます。

重ねられた顔写真は約200枚。3分間、連続してシャッターを押し続けて撮影されています。撮影された人は3分という短くも長くもある時間、じーっとカメラの前に立っていた訳です。全く動かない人なんていません。目玉は動きます。眉毛だってぴくぴくします。笑顔を3分間作り続けること、できますか。私はできません。顔写真は手前(一番上)から奥(一番下)に向かって時間が進んでいくように重ねられ、彫られます。歪んだ顔はモデルとなった人の3分間の動きや意識でした。

まるで化け物の様に目が盛り上がり恐ろしい形相の写真のモデルは、最も美しい人。顎のラインがシャープで端正な顔をしたヒスパニック系のモデルは、実は、もっと面長でお世辞にも男前ではなかったとか。歪みの最も少ないアジア系の女性は、撮影中とても爽やかでモノをはっきり言う気持ちの良い人だったらしい。

人の3分間全てに焦点をあて動きから想像できる物語や人の持つ特性を歪んだ顔で見せてくれる作品でした。笑顔が綺麗で歯が白くて肌のキメが細かくて人形のようでまたわざとらしい程に人間臭い人間の写真、つまりグラフィック広告に映し出される静止した美しい虚像に慣れた想像力にとっては、とても強烈な作品かもしれません。



私はこの作品を見ながら空間や場所を感じていました。3分という時間が作品の中に表されているからでしょうか。彫り出された線が等高線に見え、地図をイメージしていたからかもしれません。私は自由自在に3分間を行き来し、モデルとなった人の中に滞在し、癖や口調や職業や生活を想像していました。もはや歪みは気になりません。それどころか、愛らしくすら感じます。奇妙だと感じてその対象との間につい引いてしまう自分との境界線は思ったよりも簡単に無くしてしまう事ができるのかもしれませんね。


Nerholはグラフィックデザイン領域で活動する田中義久さんと現代美術領域で活動する飯田竜太さんのユニット。それぞれの環境で得られる経験や知識(ステイトメントにはdisciplineとありました。)を組み込み、新しい表現/基準を提示する活動を行なっています。アイデアを練る田中さんとアイデアを彫る飯田さん。練る彫る。Nerhol。

当日、偶然在廊されていたお二人と話す機会がありました。長いインタビューの後、不躾にも色々と質問した私に丁寧に回答してくださいました。ありがとうございます。ギャラリーの方に聞くと今年は後2回程展示を行うとか。次の作品も楽しみです。


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Nerhol新作展「Misunderstanding Focus」
会期:2012年4月10日 - 5月13日
会場:limArt(リムアート)

■Nerhol
www.nerhol.com 
http://www.facebook.com/Nerhol

■limArt(リムアート)
東京都渋谷区恵比寿南 2-10-3 1F Tel:03-3713-8670
E-mail:nakajima@limart.net  Web:www.limart.net
営業時間:12:00 - 20:00 定休日:月曜

※上記の写真は以下のサイトより引用いたしました。
www.limart.net
http://www.facebook.com/Nerhol