ゴブリン公爵




ゴブリン公爵(1) (手塚治虫漫画全集 (352))

ゴブリン公爵(1) (手塚治虫漫画全集 (352))







コミックの表紙に使われている鬼のような石像の名前は「燈台鬼」と言います。3000年前、はじめて中国を統一した殷(いん)王朝が守護神として造り、念力で自由に動かせる破壊ロボット。それをめぐって善悪4人の登場人物がぶつかり合う。人を殺す兵器にもなれば人を救う存在にもなるロボットを巡り、善と悪の戦いがはじまる…





悪役が漫画のタイトルを飾るこの作品。手塚作品は主人公と相対する「悪」が際立つものが多いですが、その中でも個性の強い「悪」が登場しているからでしょうか。作者自身も「この作品の最大の収穫は新しいタイプの悪の少年を生み出したことでしょう。」とあとがきで書いています。





手塚作品の悪役スターは「間久部緑郎=ロック」です。作品によって多少違いはありますが、どこか普通の人間と外れた執着(例えばナルシストとか…)を持ち、絶対的な「悪」として活躍します。ところが、ゴブリン公爵の珍鬼は、それとはまた違った悪の人間として登場。冷血な一面を持ちつつも、人間らしい弱さを持った、誰もが陥りうる危うい「悪」の存在です。





ストーリーはたぶん少年向けだと思います。全編、超能力合戦が繰り広げられる、いわゆるエンターテインメントです。それはそれで楽しいのですが、悪役に注目して読んでいただくと、また違った楽しみ方ができる深い(?)作品です。つまり、噛めば噛むほど美味しい、燻製みたいな漫画です。