2013/01/01

新年のご挨拶


あけましておめでとうございます。

2013年というあまりにも現実味の無い数字の並びに驚いている元日。気がつけば半年以上もレビューを書いておりませんでした。では何も展示を見ていなかったのか。そんな事はありません。毎週、毎月のように素晴らしい作品に出会い、書ききれないほどであります。

激しく燃え上がる炎のすぐその横で静かに聞こえる菌の萌芽。「プチッ。プチッ。」その音を昨年は聞くことができました。今はまだ細く頼りない緑色をした茎もまた、これから大木へと成長するはずだと確信もてる草むらも見つかりました。

何かに絶望してしまう時はその緑を思い出します。2012年と同様に、2013年は次の年へのステップ。来る”何か”の一助となるべく、今年も数々の展示やイベントを記録し続けていきます。

2013年も、ライターヨネザワエリカをよろしくお願いいたします。


※1月1日は実家(大阪)に帰り、屋根裏部屋に保存してあった手塚治虫を読み耽っておりました。これは「きりひと讃歌」のワンシーン。


2012/05/29

日本・モルディブ現代美術展の帰国展「呼吸する環礁(アトール)―モルディブ・日本 現代美術展」を見てきました。

女装の私が青山spiral gardenにて実施されている「日本・モルディブ現代美術展の帰国展」に行ってきました。これは3/20から4/19までマレ市のモルディブ国立美術館にて開催されていた「呼吸する環礁(アトール)-モルディブ・日本芸術展(主催:国際交流基金)」の帰国展です。日本人6組、モルディブ人2組のアーティストが作品を展示していました。日本からは淀川テクニック、荒神明香、田口行弘など、モルディブからはAfu(Afzal Shaafiu Hassan)やMillzeroが参加と、なかなか見ごたえのある展示です。Afuは砂で絵を描くアーティストとして日本のメディアでも取り上げれられています。




spiral gardenは建物入って右側から入場、左と右に展示がわかれます。左に進むとホール。その展示はスロープをあがって2階からも見ることができ、また、カフェで珈琲を飲みながら見ることもできます。ホールには荒神明香、淀川テクニック、藤森照信の展示。ホールに向かう壁には狩野哲郎、中谷芙二子、Afu (Afzal Shaafiu Hassan)が展示されています。後者2組は映像の展示となっており、カフェからゆっくり見るのも良いかもしれません。入場して右に進むと田口行弘とMillzeroの作品が展示されています。



中谷芙二子さんの霧の彫刻は映像での展示でした。こればかりは現地で体験したかった。以前、日仏学園で彼女の霧の彫刻を体験しています。「状況としての彫刻」という言葉通り、自分やその他の人間を中心とした状況に霧が現れることで私たちの状況は変化します。風景と自分との間に霧が差し込まれることでその関係は変化し、木々や草花や電灯や建築物など見慣れたそれが姿を変えます。幻想的になり、つまり美しいのです。霧は「光」と自分との関係も変えます。視覚できないただ環境としての光が形となって(多くの場合は線)私たちの目の前に現れます。中谷さんの霧の彫刻が展示されている場所では、多くの場合この光は影を伴って現れます。自分が動くと影が動き、合わせて形となった光も動きます。霧は自分とあらゆる物事の間に差しこまれ、インタラクティな作品となります。機会があればぜひ実際に霧を体験してください。





荒神明香さん作品はモルディブの海に飛び込んだ瞬間の泡を体験させてくれます。球体の水の泡のように見えますが実は…。とてもシンプルな作品です。こんなに簡単なアプローチで、海の飛び込む興奮を体験できるなんて不思議な気分です。ホールに展示された荒神さんの作品の右向こうには、淀川テクニックさんの作品が見えます。それは魚の形をしているので、荒神さんの作品を通じて体験する世界を膨らませてくれます。水没の危機に瀕しているモルディブ。この泡がまだ海の体験の美しさを伝え、そして海を畏れる人の心の動きをただ恐ろしいではなく少しでもプラスに転換する力があるものと信じたい。






田川行弘さんの作品は、現地の女性が身に纏う布や男性の着るTシャツを使った作品です。展示された布を見ると幾何学模様や見慣れない言語(おそらく現地語)のロゴが描かれています。田口さんは今回、布をマンホールの蓋や看板の凹凸にあてがい、その上から絵の具を塗ることで形を浮かび上がらせる手法をとりました。その制作過程を撮影。コマ撮りのアニメーションにした映像が、布が垂れた白い壁に投影されています。布に向かって左側の壁には、モルディブでのオープニングパーティの様子が映像で紹介されていました。若者が作品を着用し踊っています。打楽器を鳴らし、踊り、歌い、周りから人が増えカメラの前や後ろで踊り狂う。とても楽しそうな風景でした。現地では、おそらく「パフォーマティブインスタレーション(参照:http://sayonalife.blogspot.jp/2011/07/mam014.html)」としての展示がなされていたでしょう。街中の記号が刷り込まれた毎日着用する衣服。その場所で生活する人々が生きるだけインスタレーションは続くのかもしれません。街中からその記号が消えてしまっても人々の生活に刻まれます。





淀川テクニックさんはモルディブの海辺に集積されたゴミを集め、魚をつくりました。口の中にはモップがあり、ざらざらとした舌を想像させます。なんと尾はのこぎり!ギザギザです。目はサングラス(であったもの)を使っています。うろこの一枚一枚、違った種類のゴミが使われ、ひとつひとつ確認すると時間があっという間に経ってしまいます。




淀川テクニックさんの作品を見るたびに思うのですが、集められたゴミはなんとも力強い。バラバラと川を流される(淀川のゴミを集めて作品を作っているので)ゴミは、本当にゴミなのかどうか疑いたくなる。もちろん、ゴミはゴミ。生活からはみ出た物。しかし、その「生活」からはみ出たものを集めて生活している人だっている。河川敷の路上生活者。彼らにとってゴミは「要らないもの」ではなく生活の糧になるわけです。流れ着くゴミはその周辺の生活の重層的な側面を見せてくれます。それを格差だと捉える人もいるでしょう。多様性と捉える人もいるでしょう。もったいない精神を引き出される人も、ゴミが作品になることに対して批判的な態度をとる人もいるでしょう。そんな周囲の視線の間をくぐり、ゴミの魚はのんびりと泳いでいます。その悠々とした態度が、私に目には力強く泳ぐ魚の姿に見えるのです。




淀川テクニックさんのブログには、作品制作を手伝う現地の若者が紹介されています。彼らにとってゴミとは何でしょうか。観光客が落としたゴミであれば、もしかすると自分たちの生活における資源かもしれません。自分たちの生活圏が落としたゴミであれば、前に書いたような重層的な生活をイメージしていたのかもしれません。

ゴミがあるということはその生活圏に力強さが残っているということなのかもしれない。ゴミが無いということは、それは美しい生活だと考えられるかもしれないけれど、実は骨抜きにされた弱弱しい生活なのではないか、と想像が飛躍してしまうほどに力強い作品をぜひ見に行ってみてください。

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【イベント概要】
会期:2012年5月24日(木)~6月3日(日) 11:00~20:00
会場:スパイラルガーデン(スパイラル1F)
〒107-0062 東京都港区南青山5-6-23 スパイラル1F

【日本・モルディブ現代美術展の帰国展】
■モルディブ大使館サイト内:
■国際交流基金サイト内:

■Spiral Ggardenサイト内:

【参加作家】
狩野哲郎

荒神明香

田口行弘

中谷芙二子

藤森照信

淀川テクニック

Afu (Afzal Shaafiu Hassan)

Ali Nishan (Millzero)

2012/04/20

「ツノムシテン/触展」を見てきました。


女装の私が、東日本橋駅からすぐのgallery*yorucaで4月19日まで開催されていた「ツノムシテン/触展」を見てきました。


デザインと生活文化をめぐるデザインフォーラム "foro 08" (フォロ・ゼロット) のメンバー 西森陸雄、今村創平、橋本夕起夫、松下計、皆川明が2009年2月よりスタートさせた「五感とデザインの関係性」をテーマにした展覧会プロジェクト。その第4弾が本展示。「触覚」をテーマにしたデザインに挑戦する作品群は、見た目に異様。触れたい触れたくないの境目をウロウロと行き来しながら鑑賞できる展示でした。

その中でも特に、ミナ・ペルホネンの皆川明さんの作品が印象的でした。

昆虫の触角を模したヘルメットが置かれていました。全部で3種類。ただただ長い触角が2本伸びているヘルメット。蛍光イエローのビニル製のチューブが何本も伸びているヘルメット。先端に鈴のついた触角が2本あるヘルメット。ヘルメットは自由に手に取る事ができ、もちろん、頭にかぶることができます。gallery yorucaは吹き抜けの階段を挟んが1階と2階があり、その2つは開放的なのですが、広さはそこまで十分ではありません。(だからこそできる展示が素敵なのですが。)

さて、そこまで広くない展示スペースで長い触角のヘルメットをかぶるとどうなるか。ちょっと頭を動かしただけで触角が天井にぶつかります。「がりっ」と音がし、コンクリートと針金が接する硬い感覚がヘルメットを伝わり頭に届きます。条件反射で首をすくめ、そして周りを伺った自分に驚きました。命を狙われているわけでもないのに。びくびくしてバカバカしい…。しかし確かに触角を伝わる違和感で警戒心が高まりました。「んなばかな。大げさに言い過ぎじゃないですか。」多少、誇張しているのは否定しません。ただ、可動範囲が急に狭まる感覚を想像してください。恐ろしいです。

頭をそろそろと動かし、触角を含めた自分の身体を確認します。なんと不自由で窮屈なんでしょうか。何もできません。動けません。そろそろと静かに音を立てないように、動物に例えるならば「ナマケモノ」程の速度でしか動けないのです。展示スペース内でしか体験することのできなかった触角の触覚。建物の外にでて体験すればこの閉塞感から開放されるのかしら。妄想を巡らせてみたのですが、電柱や看板や電線や車や自転車や潜り抜ける扉の高さ、乗り物の天井の低さや一般的な建物の天井…生きづらさしか想像できません。

「私たち人間はもっと敏感であるべきだ」とか「生活環境に情報量が多すぎるのが問題だ」とか声高に言うつもりは無いです。触(ツノムシ)展を通じて、思った以上に人間はコンパクトで、その割に繊細。にも関わらず刺激的な環境で生活しているのだなあと再認識できました。湯葉の厚みほどギリギリの状態で、私たちは歩いているんですね。


…うーん。もう1つ。この展示を通じて感じたこと。鈍感な自分に気づけたかもしれません。そこに何があるのか、自分にとって危険なのかそうでないのか、自ら情報を刺激を取得し現状を把握しようとする触感が鈍感になっている。逆に、与えられる刺激に対しては敏感なままでいる。「私たち人間はもっと敏感であるべきだ」とまで言いませんが、刺激に対して受け身でいることをもう少し意識したい。なるべくなら積極的に感じる姿勢を保ちたい、と思わせられます。

この展示は五感をテーマにしています。今回は第4弾でした。という事はまだ1回展示がある予定です。次回が楽しみなグループ展でした。


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【ツノムシテン 触展】
会期:2012/4/6~4/19【終了】
会場:ギャラリーヨルカ (MATERIO base. 内)
詳細:www.materiobase.jp

2012/04/16

Nerhol新作展「Misunderstanding Focus」を見てきました。


女装の私が、恵比寿にあるlimArtで開催中のアートユニットNerholによる新作展「Misunderstanding Focus」を見てきました。

重ねた2Dを彫り3Dに再構築する事で対象物の新しい印象や解釈を鑑賞者に与えるNerholの新作は、ポートレートをモチーフにしていました。limArt内の展示は大きく2つの構成にわかれています。入り口すぐは大きくプリントされた作品が8点ほど。その奥の部屋には胸の辺りの高さのテーブルに20〜30程の作品が展示されていました。



奇妙に歪められた人の顔をよく見ると地図の等高線のような筋が何本も引かれています。顔はこの線に沿って歪んでいます。線には影が見えます。重ねた紙を彫って作られた作品のようです。しかし顔写真を重ねて彫っているだけならば、このような歪みは起こりえません。顔の輪郭は心電図のように凹凸し、鼻や目がほぼ無くなっている人もいます。

重ねられた顔写真は約200枚。3分間、連続してシャッターを押し続けて撮影されています。撮影された人は3分という短くも長くもある時間、じーっとカメラの前に立っていた訳です。全く動かない人なんていません。目玉は動きます。眉毛だってぴくぴくします。笑顔を3分間作り続けること、できますか。私はできません。顔写真は手前(一番上)から奥(一番下)に向かって時間が進んでいくように重ねられ、彫られます。歪んだ顔はモデルとなった人の3分間の動きや意識でした。

まるで化け物の様に目が盛り上がり恐ろしい形相の写真のモデルは、最も美しい人。顎のラインがシャープで端正な顔をしたヒスパニック系のモデルは、実は、もっと面長でお世辞にも男前ではなかったとか。歪みの最も少ないアジア系の女性は、撮影中とても爽やかでモノをはっきり言う気持ちの良い人だったらしい。

人の3分間全てに焦点をあて動きから想像できる物語や人の持つ特性を歪んだ顔で見せてくれる作品でした。笑顔が綺麗で歯が白くて肌のキメが細かくて人形のようでまたわざとらしい程に人間臭い人間の写真、つまりグラフィック広告に映し出される静止した美しい虚像に慣れた想像力にとっては、とても強烈な作品かもしれません。



私はこの作品を見ながら空間や場所を感じていました。3分という時間が作品の中に表されているからでしょうか。彫り出された線が等高線に見え、地図をイメージしていたからかもしれません。私は自由自在に3分間を行き来し、モデルとなった人の中に滞在し、癖や口調や職業や生活を想像していました。もはや歪みは気になりません。それどころか、愛らしくすら感じます。奇妙だと感じてその対象との間につい引いてしまう自分との境界線は思ったよりも簡単に無くしてしまう事ができるのかもしれませんね。


Nerholはグラフィックデザイン領域で活動する田中義久さんと現代美術領域で活動する飯田竜太さんのユニット。それぞれの環境で得られる経験や知識(ステイトメントにはdisciplineとありました。)を組み込み、新しい表現/基準を提示する活動を行なっています。アイデアを練る田中さんとアイデアを彫る飯田さん。練る彫る。Nerhol。

当日、偶然在廊されていたお二人と話す機会がありました。長いインタビューの後、不躾にも色々と質問した私に丁寧に回答してくださいました。ありがとうございます。ギャラリーの方に聞くと今年は後2回程展示を行うとか。次の作品も楽しみです。


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Nerhol新作展「Misunderstanding Focus」
会期:2012年4月10日 - 5月13日
会場:limArt(リムアート)

■Nerhol
www.nerhol.com 
http://www.facebook.com/Nerhol

■limArt(リムアート)
東京都渋谷区恵比寿南 2-10-3 1F Tel:03-3713-8670
E-mail:nakajima@limart.net  Web:www.limart.net
営業時間:12:00 - 20:00 定休日:月曜

※上記の写真は以下のサイトより引用いたしました。
www.limart.net
http://www.facebook.com/Nerhol


2012/03/31

「超群島 - HYPER ARCHIPELAGO "3.11以後、アーキテクト/アーティストたちは世界をどう見るか?"」を見てきました。



女装の私が表参道gyreで開催されている「超群島 - HYPER ARCHIPELAGO "3.11以後、アーキテクト/アーティストたちは世界をどう見るか?"」を見てきました。ディレクターが同じ(飯田高誉氏/青森県立美術館チーフ・キュレーター)だからでしょうか。2011年大阪での堂島リバービエンナーレで出展されていた作品が数点あり、作品それ自体では既視感のある展示でした

同じ作品でも展示する空間、場所、そして文脈が変わればまた違う経験を得ることができます。世界とは「超群島」と捉えられる3月11日震災以降の日本の構造です。堂島ビエンナーレでは「未来に向けての地球のビジョンや自然観を考察」した作品が展示されていました。藤村龍至さん、大庭大介さんの作品は大阪と同じものでしたが、コミュニティにおける役割・動機の設計や(都市ではないという意味の)自然との距離は「超群島」でもそのメッセージは機能していたように感じます。石井七歩さんはいくつか大阪展示と同じものがありましたが、総じて都市それも小さい単位での都市やビル群の擬人化(少女化)でした。単純にサイズを小さくしたのでなく、単一で、正方形のブロックをそのまま積み上げた画一的な都市やビル群。「安全神話」への問題提起は記号化された少女に対する畏れに近い。いつもながら恐ろしく美しい作品です。

スプツニ子さんの菜の花ヒールはシューズデザイナー串野真也さんとのコラボ。菜の花は土壌の放射性物質浄化を促します。新たな女神の降臨か。大地は女性性を持ちます。汚された自身の体はファッションとテクノロジーによって装飾された女性性により自浄される。男性性をもって例えられる政治に対する諦め。男性である串野真也さんとのコラボと明記されていることが、ほんの少しの希望かな。

ブラックボックスアルゴリズムのGoogle画像検索を用いて街をつくるGraffiti@GoogleはteamLabの実験。そこまでして街をつくろうとするモチベーションは何なのか。疑問に思わない事が疑問。しかし結果、そういった「まちづくり」の活動が続けられてきた事実は、確かにある。

その他、dot architects+水野大二郎さんの作品などが展示されています。4月16日まで。

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「超群島/HYPER ARCHIPELAGO」
会期:2012年3月11日(日)〜4月16日(月)
時間:11:00-20:00
会場:EYE OF GYRE
参加作家:磯崎新、スプツ二子!、teamLab、大庭大介、石井七歩、SAM [田尾松太+井口美香]、キュルル feat. チハルチロル、dot architects+水野大二郎、403 architecture[dajiba]、mashcomix+TEAM ROUNDABOUT、藤村龍至