Museum of Islamic Art, Benaki Museum、Mounira Al Solh | documenta 14 Athens

5年に1度の国際芸術祭ドクメンタのアテネ会場を見てきました。いくつか作品を紹介します。

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documenta 14
Athens

Venue Number [29]
Museum of Islamic Art, Benaki Museum
http://www.documenta14.de/en/venues/15264/museum-of-islamic-art-benaki-museum

Artist
Mounira Al Solh
http://www.documenta14.de/en/artists/13500/mounira-al-solh
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アレクサンドリアに住んでいた大商人Antonis Benakiが所有していたコレクションをもとに設立されたMuseum of Islamic Art, Benaki Museumには、ベイルート出身のアーティストMounira Al Solhの作品が展示されています。"I Strongly Believe in Our Right to Be Frivolous"というタイトルのプロジェクトをカッセル/アテネで展開しています。

以下はMuseum of Islamic Artにある展示物。想像以上にボリュームがあります。





さて、documenta14の作品について。Mounira Al Solhは中東、北米からの難民を中心に、"I Strongly Believe in Our Right to Be Frivolous"をテーマにインタビューを行い、それを作品化しています。このタイトルを日本語に意訳すると「私には他愛のない日常をおくる権利があるはずだ」でしょうか。直訳では「私は軽薄でいられる権利を強く信じている」ですね。


ビザンチン/オスマン帝国時代風の紋様を刺繍した寝具(ベッドカーテン)のテントの中に、インタビューされた内容を刺繍した紙が置かれています。テントの中を覗き込むようにして鑑賞する形態。最初はプライベートな日常を覗き込むような内容かなと思っていましたが、プロジェクトタイトルから想像すると、もっとこう私たちが「重要だ」とか「重大だ」と期待しているような内容ではない…正式なアーカイブのプロセスからはこぼれ落ちそうな小さな内容が記載されているようです。

ちなみに刺繍は一行につき一時間もの時間がかかるそう。一枚の紙に30行ほどあったので、一つの物語に一日以上の時間をかけているということになります。それも「他愛もない日常」の話に。

これは皮肉をこめた作品とは違う気がします。「難民」という言葉から想像するのは、激しい(これは程度の問題)貧困や闘争や不幸ばかり。でも彼らも生活者で、そこには記録することに躊躇するくらい他愛もない出来事があるはず。そこを見ずに「問題解決」を行うことが、ある意味政治的に利用されているという事実を意識させられてしまいます。