Pedion tou Areos、Pope.L | documenta 14 Athens

5年に1度の国際芸術祭ドクメンタのアテネ会場を見てきました。いくつか作品を紹介します。実際作品を鑑賞することはできなかったのですが、強烈な場所でした。

---
documenta 14 
Athens


Venue Number [35]

Pedion tou Areos



Artist
Pope.L

---


一日を満遍なく使おうと思っていた私は時間の記載がない…つまりいつ行ってもやっているPedion tou Areosの作品を朝8時から見に行くことを決めました。メトロにのって「Biktōrias」駅へ。地上でカフェへ。FreeWifiを使って地図を確認し公園に向かいます。

細い道を選んで公園の側面に出ると、目の前にバスが何台か並んでいます。どうやら観光バスの休憩所になっている様子。その向こうにステージのようなものが見えました。グラフィティにうめられているそのクリーム色の建物・・というかスペースではスタッズのついた革製品を身に纏った若者(といえない見た目の人もいた)たちが瓶を片手に何やら口論をしています。ギリシャ語のわからない私でも呂律がまわっていないことがわかります。ちょっと危険を感じたので撮影もせず遠回りをして公園の入り口へ。

実はその若者がたむろしていた場所が作品が設置されていた場所であり、アーティストコレクティブによるオキュパイがあった(今もアートスペースとして運営されているらしい)Green Parkでした。



アテネ最大の公園であるPedion tou Areosには1934年以降、ギリシャ革命の英雄たちを祭った大理石の胸像が21個も飾られています。もしかするとかつてのメイン通りと現在のメイン通りが違っているのかもしれません。私が胸像を見かけた通りは、入口から少し離れた筋にありました。80年近く前のことですから変化もあるでしょう。実際、かつてはアテネ市民が集まり様々なレクリエーションを行ったり、カフェに集まって時間を過ごす、賑わいのある公園だったそうです。そのカフェの名前はGreen Park。そうです、オキュパイのあった場所です。

documenta14のサイトには何という名前のアーティストコレクティブが行ったことなのか記載はありません。Googleで調べるとGREEN PARKと題されたサイトが見つかり、ここにオキュパイの宣言文が見つかります。

Today on the 19th of June, 2015 we are occupying Green Park cafe in the Pedion tou Areos, one the the two central parks of Athens. more...

もっと調べると、クロアチアの首都ザグレブを中心としたパフォーマンスグループのBADco.Facebookページ上で宣言文を掲載していました。

とにかく、私は上記したサイトにあるスペースに入ることなく、その前にたむろしていた若者に怖気づいてしまい、せっかくの作品を鑑賞することができませんでした。。


公園は広くとても気持ちのいい場所でした。やせこけた猫が残飯をあさり、大きな野良犬がメイン通りの真ん中で鎮座し、植え込みの奥にあるベンチでは少し年齢のいったカップルが周りを気にしながら性行為をしています。何かの取引のような受け渡しをしている怪しげな老人と若者も見かけました。なかなか経験できる光景ではありません。数十分ほど散歩した後、足早に、いえ、かなり急いでその場から逃げました。正直怖かった。



Pope.Lの作品はWhispering Campaign (2016–17)というもので、その場所にまつわる人や周辺住民から収集した言葉をささやき声にして流しているというものです。視覚的に何か作品が存在しているというわけではありません。私はギリシャ語がわからないので、彼の作品に出会うたびに(というのも、彼の作品は駅から離れていたり、行きづらい場所にあるのです。)どっと疲れてしまいます。ただ、展示場所は観光でなかなか訪れない場所が多いので、いい機会だと思ってその場所を楽しむようにしています。

恐らくPedion tou AreosでのPope.Lの作品はGREEN PARKに関する内容が囁かれていたのではないかと想像します。この場所では現在でも政治や文化に関する議論が活発に行われているらしく、documenta14の関連イベントとしてトークも開催されています。もしかすると彼らがこのオキュパイの前に行い、彼らの活動の理由や実績の基盤として挙げているEmpros theatreのオキュパイについて触れていたかもしれません。

GREEN PARKの活動が、どの程度まで承認されているのか、行政との関係は、documenta14との関係は、地域の住民との関係は、この場所の権利者は、権利の移動はあったのか、などなど。とても気になる場所に連れてきてくれたPope.Lに感謝したくなりました。


ところでGoogleで「Pedion tou Areos」と入力すると「Pedion tou Areos refugee」という予測検索が出てきました。気になり調べると2015年8月の記事が見つかりました。そこにはPedion tou Areosに難民キャンプがあったということ。別のキャンプへの移動を求められていたが、難民は拒否していたこと。記事が掲載された前後で難民の移動が完了したことが書かれていました。GREEN PARKのオキュパイは2015年6月9日に宣言されています。この微妙な時期の重なりもまた、Pope.Lの作品が囁く何かなのかもしれません。

以上