青山裕企 写真展『schoolgirl complex BEST 2006-2011』を見にいきました。


女装の私が中野ブロードウェイの2階奥にあるpixiv Zingaroで開催されていた青山裕企さんの個展を見にいきました。青山さんの写真を初めて見たのは、お世話になっているブックデザイナーの方から譲っていただいた「絶対領域」という写真集です。絶対領域という言葉はニーハイソック(もしくはハイソックス)とボトムスとの間にある肌色の事を言います。フェティシズム満載の少しこっ恥ずかしい写真集でしたが、佇まいは静かで、どこか上品。昔の自分と向き合っているような気がしました。『schoolgirl complex BEST 2006-2011』は、そんな青山さんが2006年から撮影をスタートした“記号的な女子高校生”写真シリーズをズラリと見ることができます。いやはや。その写真の佇まいからは想像できない激しさを持った(私にとって、ですが)展示でした。


中野ブロードウェイに行くのは久しぶりでしたが、迷わずpixiv Zingaroに辿りつけました。壁には2006年から青山さんが撮影された作品が、年代やコンセプトごとに区切られ展示されていました。ぐるりと時計回りに歩くと最近の作品までたどることができます。真ん中には、四角く組まれたブロックがあり、その天板に写真作品が敷き詰められていました。全てが女子高生という記号。目が写っていません。肌色と制服と。。。


男子校に通っていた私たちにとって女子高生は遠い存在でした。自転車通学ですれ違うあの子。雨の日に電車の中で見かけるあの子。文化祭シーズン、女子高の文化祭で見かけるあの子あの子あの子あの子を、顔ではなく制服で認識していました。お嬢様の学校。不良の多い学校。先生と寝る子が多い学校。芸能人のいる学校。いまいちな学校。私たちがあの子の話をする時、あの子は頭に校名を付けて呼ばれます。◯◯高校の●●さん。恋人ができた友人はあの子の通う学校を自慢します。制服を脱いだあの子があの子でなくなる日曜日。納得できない違和感を押し殺して、男子校に通う私たちは、あの子を追い求めていました。


作品について書くつもりが、自分の思春期の話をしてしまいましたね。すいません。まだ続けます。すいません。


厳しい学業と、私学に通う事によるご近所との断絶と、思春期の体の変化に伴う戸惑いと、自分の性についての揺らぎ。他人よりも自分を見つめることに忙しい私にとって、身近な他人を考える際、記号を記号のまま捉えて把握することが精一杯でした。そして記号に憧れを抱いて、記号を纏う。私にとって、青山さんの写真の中の少女は私(であって欲しかった私)です。パラレルワールドに迷い込み、いくつもの分岐点を遡ると、それは私であるはずだった姿です。現実の私は、男子校に通う男子。女装をして可愛いと言われる事で自分を確かめていました。記号を纏うことで私は「みんな」になり自分の輪郭が融解し、私はあの子になることができました。それらは妄想でした。


私は戸惑いや妄想やフェティッシュな願望や後ろめたさの対象にすらなれなかった。青山さんの作品は、少女が欠落した女性性を持つ私の様々をえぐります。いやはや。激しい展示でした。


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青山裕企HP
pixiv ZingaroHP
※写真は青山さんのサイトから引用させていただきました。
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