2011/07/22

三嶋章義「Hierarchy」を見てきました。



女装の私が、広尾にあるNANZUKA UNDERGROUNDで開催されている(7/30まで!)三嶋章義の展覧会「Hierarchy」を見てきました。









アルミの板にスプレーで何層もの色を塗る。その板を折り曲げて磨く。磨かれた場所から色が顔をのぞかせてくる。三嶋氏自身も想像の付かない表情を見せるその板は、人の顔だ。板で組まれた三段のピラミッドに13個の顔が並べられている。糸の施されたもの、鋲を打たれたもの、細長くそびえるように折られ両端を編み上げられたもの。表情が違う、そして置かれている場所が違う。しかし、それらは全て、アルミの板。ペラッペラの。








10~20もの色が塗り重ねられているアルミの板。カラーチャートを用いて重複を無くした色の層は、とはいえ、三嶋氏自身の想像の外から表情を持ち出してくる。まるで子どもだ。”偶然”という一言では片付けられない想像の外からの来訪。しかし彼らは”HIERARCHY(ヒエラルキー)”に取り込まれる。








私から見た彼ら(色を重ねられ、折り曲げられ、磨かれたアルミ板)は、ピラミッドの外側を向いて、鑑賞者の側を向いて展示されていた。自分たちがどの階層にいるのかを知らされていないかのように。もしくは、現状を直視していないかのように。ヒエラルキーに取り込まれた彼らは、一つとして同じものは無い。「同じだ」と断言することを拒否するかのように個性を見せている。折られたアルミ板 -つまり環境に強いられた形- の違い、塗り重ねられた色の層 -つまり歴史- の違い…。同質の板で組み上げられたピラミッドの単調なイメージが、余計に個性を強調する。しかし、それらに関係なく”HIERARCHY(ヒエラルキー)”はそこにあった。









呪術的なまでの執拗さでつくられた作品です。在廊されたご本人と少しお話をさせていただき、製作過程のお話も少しお聞きすることができました。とても気持ちの良い方でした。スプレーの粉塵から身を守るためにマスクを着用して篭られるそうです。長髪で、がっしりした長身の方が一心不乱に制作されるお姿は、素敵でしょうね。。。はっ。閑話休題。ご本人は”FUGAHUM” http://www.fugahum.com/ というブランドのデザイナーをされています。こちらのショーが毎回コンセプチュアル。ぜひチェックしてみてください。








ところで、作品が並んでいるシンプルなピラミッドの裏側を、展示の構造上、見ることができます。シンプルで強制的なHIERARCHY(ヒエラルキー)の中に三嶋氏が置いたモノ。今後はインスタレーションを考えられているとの事。楽しみです!





2011/07/05

「MAMプロジェクト014:田口行弘」を見てきました。



女装の私が、森美術館で「フレンチウィンドウ」と同時に開催されていた「MAMプロジェクト014:田口行弘」を見てきました。








会場に入ると、左側の壁はむき出しのベニヤ板。「MOMENT」とくりぬかれた板の向こうにはパイプ椅子が重ねられています。正面のディスプレイには映像が流れ、すぐ右にはボロボロに折られた板が重ねられ、白い正面の壁には緑色の養生テープで文字が書かれています。映像に目を移すと、六本木ヒルズのカフェやビル内や森美術館で撮影されたコマ撮りのアニメの映像が。(以降ネタバレです)何枚もの白い板が蠢いています。板はカフェの椅子を動かし、珈琲を飲んでいる客を乗せて滑ります。周囲を巻き込み、板は進みます。エレベーター、展示会場、廊下、そしてまた六本木ヒルズ。ん。”また六本木ヒルズ”…?。作品は終わり無く繰り返される映像でした。コマ撮りだからできたのでしょう。(ネタバレ終了)








『面白いなあ』と眺めていると、「これで完成ですか?」とスタッフに声をかけている人がいました。田口さんは「パフォーマティブ・インスタレーション」という作品で注目を浴びています。「パフォーマティブ・インスタレーション」とはドローイング、パフォーマンス、アニメーション、インスタレーションがミックスされたもの。アニメーションの撮影そのものがパフォーマンスです。展示(同時開催されるイベントや会場そのもの)は撮影を兼ねたインスタレーションです。「これで完成ですか?」とスタッフに質問をしたその人は、現実と作品の境目がわからなくなったのです。自分がいる空間は、時間は、作品そのものかもしれないし作品じゃないかもしれない。どこかに隠されたカメラから撮影されたこの瞬間が、後で作品の一部になるかもしれない。








設営途中で片付けられていないかの様に見えるベニヤ板の山や養生テープの文字は、展示に「完成」という境目を越えた作品が無いことを示していました。私は、私が居たあの日の展示会場が作品になって、終わりの無いコマ撮りアニメの一部になっているんじゃないかと、思っています。








田口さんの作品の前に立つと、今私が立っている場所や時間がフィクション/作り物であるかのように錯覚します。でもそれは錯覚です。フィクションではありません。ビルに突っ込む飛行機や、人を殺す程の急降下を見せる株価のグラフや、家を飲み込む津波や、煙を吐き出す原子力発電所は、どれもこれも映画やドラマやアニメやゲームや小説に描かれたことのあるフィクションです。でもそれは事実です。フィクションではありません。フィクションだと思い込みたくなるような、現実離れした出来事がたて続けに起こっています。気づかぬストレスに苛まれ、狂ってしまいそうになる人もいるでしょう。そんな”今”、現実に極めて近いフィクションの田口さんの作品を見ることができて、良かった。肩の力が少し抜けました。








「MAMプロジェクト014:田口行弘」は8月28日まで開催されています。ぜひ、ご覧になってください。作品は制作途中かもしれません。